ゆきまどの家

ゆきまどの家

設計:中村大補+橋爪賢一

19.11.08

ゆきまどの家 ―ヨーロッパから届いた手紙―


ある朝届いたメールは遠い国からのものでした。
「・・・少し先の話しなのですが、主人退職の機に軽井沢周辺に移住したい・・・」
奥さまのふるさとは日本。
アルプスの麓の伝統的古民家にお住いのようです。

この御代田の森に出会ったオーナーご夫妻はとても喜びました。ワンコたちと暮らす家のイメージに合っているとのこと。
唐松、赤松、コナラの大木が既存し、ぼうぼうのブッシュにおおわれて不思議な感じに起伏もあります。

樹の多くは伐ってしまうことになりますが、下に控えている若い広葉樹を代わりに育てていくのが良いでしょう。
ブッシュはきれいに刈り取ってしまうことで家のかたちは見えてくると思います。

中村@PDO

19.11.13

ブッシュ ―軸線が見えた!―

ふさわしい家の在り方を見出すために、地形を見やすくしたいと思いました。
ブッシュ、されどブッシュ。
大樹の下で成長を抑制されてきた広葉樹の若木たち。
とても大切にしなければいけません。
大樹を伐ってしまった後の主役になっていく木たちだからです。

範囲を限定して関口潤さんに一掃してもらいました。
おかげで家の軸線が見えました。
さて、プラン作案に入りましょう!

中村@PDO

19.12.03

プレゼンテーション ―暮らしの幅―



下草を刈ると今まで分からなかった地形が見えてきました。
多少のうねりはあるものの比較的平坦地があることが分かり、ドッグランも楽しめそうです。

倒木の危険のある赤松・唐松は全て伐り、広葉樹を密に育成すると良いでしょう。
また、視界の開ける南東側に近い将来家が建つことを想定し、
敷地内だけで世界が完結できるように計画すること、
大切なところは共通の考えを持たせながら生活スタイルの違う2案を作成しました。
建物の形やリビングの位置など暮らしを形にすることで優先順位も見えてきます。

「犬たちがのびのびと日向ぼっこをする姿が目に浮かび、
主人とふたり目尻がたれてしまいました。」

というB案をベースに具体化していきます。

橋爪@PDO

19.12.18

伐採工事 ―オーナーに届け―


雪が降る前に伐採工事に入りました。
年が明けすっきりしたところで現地打合せを行います。

初めて敷地を訪れた時はブッシュで地形も分からない程でしたが、
下草を刈り敷地の全体像が見え、今回の伐採で太陽光が入り見違えりました。
これから新しい住まいと共に広葉樹の森を育てていく計画です。

伐採初日、空を見上げると飛行機雲が。
はるか遠い国にお住まいのオーナーの姿が思い浮かびました。

橋爪@PDO

20.02.07

大きなところから ―時間を共有する―


オーナーご家族が遠方にお住まいのため、
現地に足を運んでいただく機会はそう多くありません。
その分メールで連絡を取り合っていますから、
気持ちの上ではまったく距離を感じません。

この日は貴重な現地打合せです。
倒木の恐れのある針葉樹など伐採し、すっかりきれいになった敷地をご覧いただきました。
ここを広葉樹の森へと生まれ変わらせる計画です。



出来るだけ多くのことを共有するため、現段階で外観模型を作りました。
それぞれの窓からどんな景色が見えるのか、
イメージを膨らませた上で間取りの検討へと移ります。
オーナーは打合せの後早速ショールームや家電量販店へと向かわれたのでした。

まずは間取りからです。
キャッチボールしながら進めていきましょう!

橋爪@PDO

20.10.29

見積もり図読み合わせ ーリアルに対面でー

 


現在はヨーロッパにお住いのご夫妻。当時はかなり先のご計画との印象でしたが来春からいよいよ工事が始まります。8月のZOOM打合せを経て、今回は一時帰国のタイミングでお会いして見積もり図の読み合わせを行いました。入国時2週間の自宅待機が終わっての打ち合わせです。

事前にご検討いただいていましたので若干の修正をかけて見積もり作業に入ります。
今週残された日本滞在の日々はショールーム巡り。タイルや照明器具などを見ていただきます。

細田@PDO

21.04.07

工事着手 -根伐床確認-



4月に入り敷地周辺の樹木も徐々に芽吹いてきました。
基礎工事を始めるのにちょうどよい季節です。
近隣へご挨拶を行い、いよいよ工事スタートです。

地盤調査の結果が良好だったため、
基礎形状は逆Tの字形の「布基礎」になります。


基礎底盤深さを確認。
砕石で締固め、鉄筋を組んでいきます。

橋爪@PDO

21.04.15

配筋検査 -ダブルチェック-



天候にも恵まれここまで順調に進んでいます。

基礎はほとんど土に埋まってしまうので後で見られる部分は限られます。
特に鉄筋が見られるのは今だけです。
建物の形に組み上がったところで図面通りの仕上がりか確認します。
第三者機関のチェックも受け無事合格しました。

この後数回に分けてコンクリートを流していきます。

橋爪@PDO

21.05.15

祝!上棟 ―2つの表情―



5月の連休明けから大工工事が始まりました。
柱や梁などの構造材は工場で加工済なので2日程で建物の骨格が組み上がります。
頼もしい大工のチームワークで無事上棟しました。

道路から見た外観はシンプルな片流れ屋根。
南側は水平線が強調された平家のような顔が見られます。
どちらも威圧感なく魅力的な佇まいです。

このまま屋根の防水まで一気に進めます。

橋爪@PDO

21.06.06

上棟打合せ ―和の要素―




無事上棟をし、建物の形が見えたところで仕様決定の打合せを行いました。
シンプルで飽きのこないデザインをテーマに、各マテリアルを決めていきます。

アクセントで組み込むのが「和の要素」。
廊下の突き当りに雪見障子、キッチンの背面に格子戸、和室の襖に江戸からかみを使用します。

この日は江戸からかみの検討でショールームを訪ねました。
数多くの絵柄と色の組み合わせがある中、
オーナーの好みの藍色と江戸小紋の青海波との組み合わせに決まりました。
美しいグラデーションは職人の手仕事によるものです。

建築空間に入るとどんな表情を見せてくれるのか。
今から楽しみです。

橋爪@PDO

21.06.22

断熱工事 ―快適な室内空間―


サンルームに2つの天窓が入りました。
明るく効果的な光が床を照らしています。
LDKと自然に繋がるこのスペースは、わんちゃんたちが日向ぼっこも出来るような、ゆとりある空間でもあります。

居心地の良さを実現するにはしっかりとした断熱が欠かせません。
現場発泡のウレタンフォームにより室内が隙間なく覆われました。

冬は太陽の熱をしっかりと蓄え、夏は通風良くしながら、
一年を通して快適な環境を作り出していきます。

橋爪@PDO

21.07.08

壁天井板張り ―木工事終盤―



PDOの建物は大工工事に多くの時間を費やします。
既製品や工業製品を使えば工期短縮になりますが、
どうしても取ってつけた感じになり仕上がりに違和感が残ります。

壁や天井の板も大工が1枚1枚張っているため時間がかかりました。
しかし仕上がりは凛としたものがあります。
窓枠含め木部は茶色く塗装をして完成です。
シンプルで落ち着いたLDK空間が見えてきました。

橋爪@PDO

21.07.17

足場解体 ―街並みへ―


外まわりの塗装を終え、足場が外されました。
道路側はシンプルな板張りが美しく、
街並みに溶け込むような外観です。


南側は屋根付きのデッキを介して庭につながり、
広い空や遠くの山並みを眺められます。

足場を立てるため一部平らに造成していたので、
この後、敷地本来の地形に馴染ませていきます。

橋爪@PDO

21.07.23

暖房工事 ―蓄熱式床暖房―



1階の床に厚さ3cmのモルタルが入りました。
下の写真はモルタル施工前の状況です。

管の中に温水を流しモルタルが蓄熱層となって足もとから暖を取る仕組みです。
部材点数が少ない分、故障のリスクを減らすメリットもあります。
床の仕上げはタイルはもちろんフローリングも可能。
モルタル蓄熱式の床暖房です。

橋爪@PDO

21.09.20

仕上げ工事すすむ



引き渡しを来月に控え、現場では仕上げ工事が佳境に入っています。工場で製作された造作家具も据え付けられて、タイル張り工事も進んでいます。



この後、家具の塗装、クロス貼り工事へと進めていきます。

細田@PDO

21.09.28

オールステンレスキッチン ―特等席―



現場は仕上げ工事終盤となりました。
打ち合わせで決定した設備や照明器具など次々に取り付けられていきます。

キッチンはオーナー希望のオールステンレスです。
引き出しの中ももちろんステンレス。
熱源はガスとIH両方を設置しました。
シンプルながらも使いやすさを兼ね備えたキッチンです。


キッチンからの眺め。
リビングダイニング、屋根に覆われたデッキ、庭の景色まで見渡せます。
この後、薪ストーブを設置するので炎も楽しむことができます。
料理以外の時間も過ごしたくなるようなキッチンです。

橋爪@PDO

21.10.27

竣工 ―和のアクセント―



予定していた工事が終わり、冬を迎える前にお引き渡しです。
街並みに溶け込んだ外観は威圧感がなく程良いスケール感です。


室内は素材を吟味しながらシンプルにまとめました。
藍色の鉄柱やタイルが差し色になっています。
縦格子や障子、襖といった和の要素も組み込みました。




キッチンから2階を見上げた先に和室(ゲストルーム)があります。
襖紙はオーナーが自宅でも愛用している江戸からかみを採用しました。
今回のためにデザインを選び、職人の手仕事によって仕上げられています。

家は住み始めて気が付くことがたくさんあります。
同じ空間でも季節や天気の違い、照明などによってたくさんの表情が生まれます。
予期せぬ角度から光が差し込んだ時には神秘的なものさえ感じます。
そんな発見も暮らしの楽しみの1つになれば幸いです。

橋爪@PDO