天然水の家

天然水の家

設計:中村大補

18.06.13

天然水の家―うるうる撮影だった―

・・・・完成しました。
私が設計者として目指したい「静謐感のある建築」が実現できました。
尾白川と背後の湧水池に挟まれた特別感のある森環境。
ここに存在する建築は「静謐」でなければなりませんでした。

梅雨入りは明日?と予報された日、
怪しい雲行きの中、写真家の松村さんと私は決行しました。
じつは雲大好きな両者は絶好の撮影日より、と思ったのです。
台風が近づくと心躍らせて海に向かうサーファーのようです。

白州ならではの白い地面の反射で森の奥から家を見ると姿が際立っています。
白砂の渓流が蛇行する瀬に木漏れ日が美しい。
良し、ここから狙おう!
あまりの美しさに目が潤みました。
と、ファインダーを覗く写真家を見ますとやはり感動にふるえています。
高山在住の吹き硝子作家、安土草多さんのペンダントライト。
夜景撮影で予期していない幻想的光を放ってくれました。

「天然水の家」もこれで無事殿堂入りできそうです。

中村@PDO

18.05.02

引き渡し―ハイカロリーバーナー―


引き渡しです。
リーダーもリーダーですが社員もみなアウトドア派。
たくさんの若手も登場です。
支給いただくコンロが現場到着しました。
やたら重い!
鋳物の五徳がことに重いようです。
土間キッチンに用意されたスペースにぴったりと収まりました。
リーダー自ら腕をふるうハイカロリーバーナーのコンロです。

中村@PDO

18.04.29

れんが積み―千曲から来てくれた―



アウトドアグリルのれんが積みはご縁あって千曲の職人さんに来てもらっています。
れんが積みのプロです。
縦目地は眠り(突きつけ)、横目地は深くして通します。
名付けて「プレーリー積み」。
100年前にFLライトが実践した手法です。
水平線が強調されてのびやかに見えます。
完成が楽しみです!

中村@PDO

18.04.20

火入れ式 —料理上手なアンコールー


引き渡しを控え建主検査です。ワクワク感満載で完成を待ち望ぞむ次世代リーダー達も一緒に水源地の森にお越しいただきました。
近くの渓谷を散策のあと建物内外をひと通りみていただきます。その後は恒例の火入れ式です。

ここは料理長の出番。社内広報用にシャッターが切られます。火入れの後にはアンコールをこよなく愛する中村が取り扱いを指南します。

GWにはコミュニティテーブルに腰掛けて火とその先の森を眺め、都会とは質の違う時間を味わっていただけることでしょう。

細田@PDO

 

18.03.28

アウトサイドグリル


サバイバルな保養施設(?)もいよいよ完成に近づいてきました。
「薪で肉の塊を焼きたい」これは最初からのリーダーの要望です。
炭ではなく薪で・・・お肉が燃えてしまうんでは?
「もちろん熾火にしてから焼くんですよ!」
なるほど、ワイルドだ。

3人が並んで焼きます。寸胴鍋を置くこともあるでしょう。
網は消耗品です。
焼肉屋さんでも遠慮なく替えてもらいますよね。
ポイントは網を受ける頑丈な鉄棒があること。
掃除がしやすく清潔に保てること。
配慮すべきことは多くあります。
実際さんざん使いにくいグリルでBBQをしてきた経験を活かしてデザインしましょう。



このような設計はとても難易度の高いものです。
正解がどこにも書いていないからです。
建築家としての実力が試されます。

中村@PDO


18.03.15

姿あらわす ーマザーハウスー


来月の完成を控え足場が外されました。白い大地の上にひっそりと佇む姿をイメージしています。工事で露わになった大地。社員の方々が広葉樹の植樹などをしながら時間をかけて水源地の森を再生していきます。

リーダーたちが次世代に伝えたかったこと。
このキャンプベースにはその想いもたくさんつまっています。

細田@PDO

18.02.22

板壁の耐久性 ―木完間近―

「耐久性、メンテナンス性を考えると板壁はアウト・・・」
などとお考えの方が多いようです。
防火上の規制のある市街地ではもちろん使用はできませんが、
合理性のない複雑な形にしてしまったり、庇の出ていないデザインにこだわったりしなければ板壁が腐食してくることはありません。
隣家からの延焼のおそれもない自然環境地では人工的な新建材よりも、
やはり自然素材を用いたいものです。
それでも「庇の出ていない」モダンなデザイン表現には魅力があります。
そうした場合は「屋根材」を外壁材として使えば万全です。

中村@PDO

18.01.24

雪でも中はあったか ーようこそ冬ー


今年の冬は去年と傾向が似ています。
温かい日が続いてこの季節にはありえない雨降りになったかと思うと、
寒波と低気圧が来て雪降りになります。

都会では大混乱を招く雪も、ここでは「特に?」という感じです。
物足りなかった冬ですがいよいよ冬らしくなってきました。

断熱材にすっぽりとくるまれ、断熱サッシがとりついた今となっては、
大工さんはじめ塗装屋さん、電気屋さんはとても快適に仕事に励んでいます。

中村@PDO

18.01.04

金物検査

壁、屋根、床下に断熱材を吹き付ける前にどうしてもチェックしなければいけない、
柱梁を緊結するする構造金物。
設計指定どおり、品確法の基準通りなされているかを検査します。
長大な渡り廊下の梁を吊り、支える合わせ柱と登り梁の緊結が
ビスの仮止めのままでした。
「通しボルトで緊結するのは段取り済です」とどうやら桜田大工も了解しているようです。
隠れてしまうところは必ず写真を撮っておくように。

中村@PDO

17.12.16

この巨大な穴は?

床に開いた 縦5m40cm 横1m という長く巨大な穴。
大人数が座ることができる”コミュニティーテーブル”へと変身します。

この巨大なテーブルは、大勢の方が利用する空間にはとてもユースフルです。
それぞれが自由に座って談笑したり、のんびり本を読んだり、
はたまた仕事の打合せや、大型スクリーンを使って映像を見たり。
何と言っても一番楽しみなのは、大勢で飲んだり食べたりでしょうか。
同じテーブルを囲んでいると不思議な連帯感や調和も生まれます。

この巨大な穴は、空間のシンボルであり中心的な存在になっていくでしょう。



兼清@PDO

17.12.12

上棟式ー冬の洗礼ー


気持ちのいい寒さですね、と、強がりを言いたくもなるような冬一番の寒さ到来。
建主様御一行様が、師走のお忙しい中、遠路はるばる上棟式にお見えになりました。
都会とは違う透明感のある空気と、爽やかにも感じるピリッとした寒さを体感されたと思います。

「この敷地はテント張り放題だね」と、
ここでの過ごし方をイメージしてワクワクとされていらっしゃいました。

桜田棟梁、鈴木大工と共に、今後の木工事の無事を祈り、急ぎ足で東京へお戻りになりました。

兼清@PDO

17.12.12

空間をつくる骨格


屋根の下地板を張り終える頃を見計らって現場を訪れました。
パブリックスペースはリニアーな空間です。
通常このスパンを水平の梁無しで造ることは在来工法としてはあまりしないことです。
空間を横断する水平梁の存在はせっかくの抜けを台無しにしてしまいます。
そこで、長方形断面の通し柱と登り梁を緊結して門型をつくり、
水平梁を不要としています。

仕組んだ通りの空間となりそうです。

中村@PDO

17.12.05

祝上棟!ー美しくシンプルなフォルムー


冬将軍が来る前に、無事上棟です!
いよいよ建物の形が見えてきましたね。
とてもシンプルで美しいフォルムが浮かび上がりました。

兼清@PDO

17.12.01

土台敷きー1本1本ー


本日も雲一つない晴天。
大工さん2名が息を合わせテンポよく作業しています。

基礎工事も順調に進み、次は土台敷きです。
基礎コンクリートの上に木材の土台を設置していく作業です。
プレカットされた木材が現場に積み上げられ、大工さんが1本1本手で運び、基礎に置いていきます。
この土台敷きやこのあとの建方までの構造部分は、建築の骨組みとなるとても大切な工程なのです。

現場へのアプローチ、美しい南アルプスの大絶景が広がっております。

兼清@PDO

17.11.08

配筋検査 —建築家のもうひとつの仕事ー


完成してしまうと見えない建物を支える大事な骨格。
基礎の配筋検査です。
予見してかたちを描くという建築家の仕事と対になっている現場監理の仕事。

地道な仕事ですがデザインと品質の要です。

細田@PDO

17.10.31

基礎工事着手!―白い砂―

今日からいよいよ基礎着工です。
水平に地ならしするとともに要所を試掘してみました。

掘っても掘っても土が出てこない・・・・。
地盤調査どおりだとは言えとても特色のある地盤です。
深さ75センチも掘ると砂に混ざって拳大の石が出てきます。
ここが地耐力40KNの基礎を支える支持地盤です。
それにしてもこの長雨の後にも関わらずサラサラの白砂です。

植生保護の立ち入り禁止区域のためのトラロープ張りは私の仕事。

中村@PDO

17.10.27

伐採完了ー空の穴ー

長い雨と台風のあと、久しぶりの晴天です。
雨のために作業をお預けにしていた伐採がやっと完了しました。
高い木々に覆われていた少し暗い森に、ぽっかりと穴があき、
大地に太陽が燦々と照りつけて、見上げると空と光が広がっています。
気持ちいい~。

伐採した全ての木材を運び終わったら、さぁ、いよいよ着工です!

PDO 兼清

17.10.24

伐採樹の選定  ー広葉樹の森への再生ー


敷地は赤松の巨木の多い森。
常緑の赤松が多い森では陽があまり入らずに林床にある広葉樹の成長は抑えられています。

工事着手に先立って建物が建つエリアや工事用車路にあたるところは伐採抜根が必要です。
合わせて建物への倒木の危険度が高い木も伐採を行います。

伐採費用とのバランス、建物完成後の森の姿なども想像しながら伐採樹を選定していきます。
陽が適度に入る森は広葉樹も育ち植生に多様性が生まれてきます。

建築の時間スケール、森づくりの時間スケール。
二つの時間軸を意識しながら計画を進めていきます。

細田@PDO

17.10.09

外観模型―長い丘の上に―

広大な敷地は赤松の巨木に覆われています。
治水がなされる前の大昔はこの敷地の一部まで川幅が迫ったと思われます。
土地に起伏があるのはそのようなことと推察されます。

家は長細く丘状となった所に建てましょう。
家の平面形はそのようなわけで長細いのです。

外観模型が出来ました。

中村@PDO

17.09.30

奇跡的な流れ



午後から雨が降るとの予報。
忙しい合間をぬって東京から施主様が地主さんとの土地の契約交渉に南アルプスの麓を訪れました。
PDOとしてもこの自然豊かな景観を保ちつつ環境に即した家を建てるという説明をするために立ち会います。

GWまでの完成を希望されている施主様。
スケジュールはとても押しています。
直接お会い出来るこの機会に、たくさんのことが進んでいったら・・、
いえ、進めていかなければと思っていました。
そのために、土地の契約も進め、近隣への理解を促し、建設許可の書類を揃え、諸々の設計の確認を進め、その土地のどこに家を建てるか・・をまずは決める必要があります。

さて、進んでいくのか、停滞するのか。

結果は、見事な流れで進んでいった!!

願っていた全てが調整でき、確認し、奇跡的ともいえる感じで会うべき方に会え、
南アルプス麓の素晴らしい森の土地へ全員で向かいます。

全てが終わった後、雨が、ポツポツと降りだしました。
あぁ天も味方した!
素晴らしい流れに、うまくいくものはこうやって流れていくのかと。
南アルプスの大自然をめいっぱい楽しむために建てるこの家は、絶対にうまくいくと確信した日でした。

PDO@兼清

17.09.25

インテリアパース ―リニアな空間―


多人数がコミュニケーションをする大きな空間はより大きく錯覚するように仕掛けがあります。
通常あるはずの空間を横断する梁はなくしています。
そうするために通し柱、登り梁、方杖など駆使して実現しています。
「なぜ普通にやらないの?」とまた大工にぼやかれそうです。

長さ5.4mのある堀座卓の上は渡り廊下に覆われています。
落ち着いてくつろぐためには頭上は吹き抜けていてはいけません。

その渡り廊下は吊り橋構造になっています。
そのために9mの継ぎ目なしの集成梁を特注します。

LINERな空間です。

中村@PDO

17.08.15

ひっそりとあること―プレゼンテーション―


様々な過去の作例をご覧に入れたとき、「こんな洗練されたものはいりません・・・」
リーダーたちはおっしゃいました。
この言葉は奥深いです。
多世代、多様な使い方、価値観・・・限定された使い方をデザインするよりも許容量が
大きくあるべきということでしょう。
素であり疎であり楚となる家、そんなところでしょうか。
何十人もいる社員と顧客をおもてなしもする、けど大きすぎてはいけない・・・。
条件を整理して作案に着手しました。

水源地の下、ひっそりとあることが大切と考えました。

中村@PDO


17.07.29

天然水の家


北杜市は広大です。
先の市町村合併の折には議論を呼びました。
大きく分けて三の地域性があります。
一つは甲斐駒ヶ岳東麓の名水と米どころエリア、
二つ目は八ヶ岳南麓の高原エリア、
三つ目は瑞牆山西麓の山村エリア。

とある会社が保養施設地に選んだのは甲斐駒ヶ岳東麓。
「広葉樹の薪で肉を焼きたい・・・・・」
リーダー達は大の自然派であり、こだわりの料理人。
白州のキャンプ場は会社慰安旅行や新人研修での常連です。
サバイバル慰安旅行・・・・・・なんでも本気の凄い方々です。

そんな会社のキャンプベースとなるマザーハウスの建築計画です。
地元の方々が大切にする水源地の下です。
素晴らしい森環境と名水と、どう共存するか?
次世代へのメッセージになる仕事としなければいけません。

中村@PDO